「ロジカルイングリッシュ」
プロローグ 「ロジカルイングリッシュ」という提案
なぜ、伝わらないのか?
筆者は、20年以上にわたる国際ビジネス経験を基に、『英文履歴書の書き方』や『プレゼンの英語』などの著書を通して、教科書英語や日本語英語ではない、実際に国際ビジネスの現場で使われている表現を紹介してきた。
最近はツイッター上で、日本の英語学習者と英語でやりとりするようになり、もう5年になる。
そこでよく見かけるのが、「文法的には正しいのに、他国の人には伝わらない英文」だ。
なぜ伝わらないのだろうか?
筆者が観察したところでは、下記が大きな要因だ。
①日本の単語を、英語に置き換えているだけの直訳である。
②非常に簡単なことを、やたら複雑な文で言おうとする。
③andやbutなどの接続詞で文がつながっているのだが、論理が飛躍していて、文と文のつながりがわからない。
「単語の置き換え」を無意識にやっていないか?
「日本語を一語一語英語の単語に置き換える」のは、英語初心者にとって最初に克服しなければならない最大の壁といえるだろう。
つまり、「単語だけが英語で、英文の裏にある考え方は日本語のまま」になっていることに気づいていないのだ。
読者の皆さんも、学校では文法を中心に英語を習ってきたはずなので、日本語と英語の文法が違うことは理解しているだろう。
「日本語と違い、英語はS+V+Oの形になる」といったことを習い、主語や動詞、目的語の順番さえ変えて、日本語の単語を英語に置き換えればつながると思っている人もいるのではないかと思う。
それでは通じない、とまず言っておこう。
簡単なことを、「難しく」言おうとしていないか?
つぶやきであるはずのツイッターでも、学術論文でしか使わないような単語を使っている人がいる。基礎英語力があり、TOEICの点が高い人のほうが、構文も非常に複雑だったりする。その結果、非常に不自然な英語になっている。
「難しい単語を使うと知的に聞こえる、かっこいい」と誤解している人もいるようだが、まったく逆である。日常会話で、こうした表現を使うと英語をマスターしていないことを露呈するだけだ。
ソーシャルメディアでネイティブスピーカーに触れたり、英米ドラマを見ていたりする人ならわかるように、ネイティブスピーカーは日ごろ、非常に簡単な単語を使っている。日本の中学で学ぶ単語や構文ばかりである。
コミュニケーションの目的は意志の疎通であり、相手に理解してもらえるよう、難しい内容でも簡単な表現を使って説明できる力こそが評価されるのだ。
論理が飛躍していないか?
論理の飛躍も、本人はまったく気づかずに起きている。英語の向こうに日本語が透けて見える筆者には、その真意を推し量れる。しかし日本語が透けて見えない人にとっては「何が言いたいのか、意味がわからない」ということになる。
「話がAからCに飛んでしまっていて、途中や背景のBを説明しないと通じない」「Bは文化や経験を共有している相手にしかわからないから、異文化の人にはBも説明しないといけない」などと言うと、「全部、説明しないといけないなんて面倒くさい」という答えが返ってきたりする。異文化間コミュニケーションというのは面倒くさいのである。「面倒くさい」などと言っていたら、意思の伝達はできないし、語学はマスターできない。
「ロジカルイングリッシュ」という提案
上記の「伝わらない英語」の主な要因に、皆さんも、心当たりはないだろうか?
これらの問題を解決するのが、本書で提案する「ロジカルイングリッシュ」、英語を論理的に伝える技術だ。
「論理的」というと、論文のような何か難しい感じを覚える人もいるかもしれないが、難しく考える必要はない。「自分の言いたいことが伝わる技術」と解釈してほしい。たとえば、日本語の一言一句にとらわれず、いかに伝えたい内容を伝えるか、難しい構文をつかわずに、いかに簡単な文で相手に理解してもらうか、論理が通った英文を組み立てるにはどうすればいいのかということだ。結局は「伝わる英語を身につける」ということである。
本書では、文法の説明は最小限に留めた。文法は中学高校で学んだレベルで十分である。基本的な言語構造を理解した後は、基本例文を覚えて実際に使ってみるしかない。「本書の構成・使い方」を基に、1章のルールを理解した後は、2章の基本例文、そして3章の応用例文を徹底的に頭に叩き込もう。
これまで文法を中心に勉強してきた人も、ちょっと角度を変えてトライしてみてはどうだろうか。本書が、皆さんの英語マスターの一助になることを切望してやまない。
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